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「あのねえ、雁屋センセはよくトバすんですよ」
 閣僚から『美味しんぼ』の鼻血批判が続くなか、麻生副総理からのそんな声はまだ聞こえてきていない。

 この問題、批判者が本当に問題の回をちゃんと読んだ上でコメントしているのかどうかは分からないが、ここ(※下図)に引用したように、鼻血を出した山岡を診察した医者は「放射線と鼻血とを関連づける医学的知見はない」趣旨を述べ、山岡も「うっかり関連づけたら大変ですよね」と答えるシーンも用意しているくらいには慎重で、まあいつもの『美味しんぼ』だ。しかも売れてない『スピリッツ』のこと、そんなに影響あるかね? というのが率直な感想だ。


発生因果論争によって拡大した水俣病
 ただ、こういう問題が起こるときにいつも頭に浮かぶのは、水俣病の発生についてだ。水俣病は1950年代くらいから鳥の不審死、犬猫が踊り狂うなどの「現象」や、漁村民の痙攣といった「症状」にはじまり、それは次に新生児の異常として現れるようになり、地域も拡大していった。ところが当時、有機水銀の中毒はまだ世界でも広くは知られておらず、熊本大学医学部を中心に「チッソ工場の廃液に含まれる有機水銀原因説」が出されたのが59年、厚生省がようやくその因果関係を認めたのが68年。

「魚にどうも原因があるらしい」ということがある時点ですでに分かっていたことは、58年に熊本県が水俣湾の漁獲を禁止したことからも明らかだが、68年まで何をしていたかというと、学者は因果関係をめぐって論争を続け、政府の研究機関は解散してしまい、一方でチッソは排水経路を他の場所へ移してしまい被害は拡大してしまった。

 つまり、奇病が見つかってから十数年間、チッソ原因説が発表されてから9年間、病人は増え続けていながらも「因果関係がはっきりしていないから」という理由で、結果として多くの被害者を生み出してしまったのだ。

 水俣の例からわかることは、「鼻血が異常に出ている」と思う人であれば、たとえトバしてでも窮状を訴える権利があり、そして権力を持つ者はたとえ眉に唾してでもそれに応える義務がある、ということだ。「風評被害」への懸念にしてみても、その根拠を「科学」に求めたって、水俣のように未熟な科学が逆に人を傷つける可能性だってあるのだ。じっさい水俣病では、「伝染病ではないか」などと風評によって差別されたのはむしろ被害者たちのほうだ。


『美味しんぼ』批判と小保方さん擁護は両立するか
 ところで、どうしてこんな文章を書き残しておこうと思ったのかというと、じつは今回の『美味しんぼ』批判をしている人のなかに、例の小保方さんを擁護する人を一定数発見したからだ。

 もちろん論理的にそれはありえない。理研の小保方さんの上司でもありSTAP細胞論文の責任著者でもある笹井芳樹氏が4月16日に行った会見で問題がずいぶんクリアになったが、「STAP現象」とは従来の科学的常識では説明のつかない未知の現象で、「STAP細胞」とはそれを説明するための仮説である。ところが、その仮説を説明するための論文に必要な材料に重大な欠陥があるので、仮説の説明もつかないし、科学的な証明もできていない、というのが現状だ。

 世間ではSTAP細胞の存在の有無で盛り上がり陰謀説まで飛び交うが、客観的にわかっていることは、「『不思議な現象がある』と訴える人がいるらしいが、科学的な裏付けはない」というだけの話だ。それでも小保方さんを信じたいという人ならば、「放射線のせいで鼻血が出る」と訴える人たちを、「科学的な裏付けがない」からといって退けることはできないはずだ。


科学への信頼とは何か
 オウム真理教の一連の事件が明らかになり始めた頃、人々が驚いたのは、「修行すれば空が飛べる」という師匠の言葉を、科学的な学習と訓練を受けてきたエリートたちが信じ、皮肉にも科学の名において多くの間違いの根拠に利用されてしまったことだ。しかし、それが「間違い」だと言える根拠は「空なんか飛べるわけない」という当たり前の常識にあり、多くの人にとってその自明性に科学的背景はなかった。では我々は間違っているのだろうか? 答えはノーだ。それは、「飛べる」とする説が科学的に反証可能だからではなく(できるのだろうが)、「修行で人は飛べない」ことは経験的に自明だからだ。

 でも、もし本当に空を飛ぶ人が出てきたら? その時、そのメカニズムを解く有力なアプローチが科学だ。もちろん、その結果に説明がつくかどうかは別の話だが、過去の知識の蓄積を他者と共有しながら一緒に謎を解くための重要なアプローチではある。

 小保方さんはそのアプローチの説明に失敗したためにその「現象」さえ外部の人間には確認できていない。しかし『美味しんぼ』は、鼻血という、比較的に確認しやすい「現象」の複数報告があるとされながら、科学的な検証の機会も与えられないまま「風評」と断定しようとする動きがある。それも科学の名において。しかし、仮に鼻血と放射線の関係が科学的に証明されたとしても、もしある地域で鼻血が有意に認められるのであれば、その原因は科学的に究明されなければならないはずなのだ。

 科学は進歩する。事実、進歩してきたし、思い起こせばそれは自分の子供の頃に夢見た明るい未来像でもあった。しかし、大人になるまで分からなかったことは、人間が科学的になったり賢くなったりするわけでもなかったということだ。鼻血が本当にあってもなくても、またそれが原発事故と関係があってもなくても、われわれはいつかの夢の科学のせいでなぜだか不幸だ。


※図 雁屋哲・作/花咲アキラ・画『美味しんぼ』(『週刊ビッグコミックスピリッツ』〔2014.5.12/19合併号、小学館〕)より



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